何もしない器用さ。

プロは、速く振ることもできるし、ゆっくり振ることもできます。状況に応じて、使い分けができます。

それに対して、アマは自分のタイミングがあって、それよりゆっくり振ろうとすると、つい振り急いでしまいます。

ゆっくり振るのは、素振りなら簡単ですが、ボールがあるとできません。

こうした事実をみて、「プロは器用だ、どんなタイミングでも振れるから」と思うかもしれません。しかし、それは間違った感想だと思います。

プロがどんなタイミングでも振れるのは、自分でタイミングをつくっていないからです。タイミングが受動的だから、どんなテンポにもマッチして振れます。 タイミングを状況に合わせて細かく変えているのではありません。

他方、アマは自分のタイミングがあります。おそらく手が右腰の手前あたりで、ある位置にきたとき、クラブヘッドの勢いを利用して、「ここ」というタイミングで自分でリリースしています。 (あるいは打っている)。

自分でリリースしているのですが、ヘッドの勢いも利用しているので、「自分で振っているのではない」と感じています。

しかし、それこそが、自分で振っているということです。

ダウンスウィングをゆっくり降ろしてきたとしましょう。それによって、振りおくれます。そして、次回からはもっと早くリリースしたほうがいいと学習します。何度も練習することにより、そうした回路をつくり、体に覚えこませます。それが、自分の決めたタイミングであり、自分の無意識の信念になります。そういう信念が形成されると、次にレッスンでダウンスウィングをゆっくり降ろそうとしても、手が右腰の手前あたりにくるところから、振り遅れてしまいそうな状況を察知して、そのまま遅く振ることに耐え切れず、急いで打ってしまいます。

そのタイミングで振るためには、ヘッドの勢いが必要で、そのためヘッドにほんの少しだけ加速をつけようとして、早いタイミングを見計らっています。

つまり、早いタイミングを自分でつくっているから、そのタイミングに縛られるわけです。受動的なタイミングというのは何もしないということなので、何もしないからいろいろ合わせられるのであって、決してプロが器用ではないのです。

そして、この「自分のタイミングで振る」というのが決定的な問題なのです。そのタイミングが早いのです。プロは、「受動的なタイミング+遅いタイミング」です。

このあたりの微妙な違いを説明しようと、 私は手を変え、品を変え、20年来、必死になって表現を工夫しているのですが、それがプロとアマを分ける、天と地ほどの違いだと思うからです。

プロは誰もそんなことはいいません。それは、受動的であることが当たり前になっているからだと思います。受動的というのは、

何もしないこと(ほんとうに何もしない)なので、プロはまったく意識せずにそれを自然にやっているわけです。アマは、何もしないことを後天的に習得しなければならないという 大きなハンデを背負っているわけです。

素振りならゆっくり振れるのに、 ボールがあるとゆっくり振れない。それは、リラックスしていないからだという解釈も よく目にします。しかし、これも間違った解釈です。リラックスしていても、ボールがあれば、タイミングを合わそうとして、早くなるのがアマチュアです。

あるいは、クラブを重いものに代えたら、ボディターンになるという考えもありますが、それも間違った考えです。タイミングを合わそうとして、早くなるのがアマチュアです。

やるべきことは、自分のタイミングを捨て、 タイミングを受動的にすることであり、それは「遅いタイミング」に変えるということです。

で、いままで書いたことからいうと、アマはダウンスウィングのあるポイントに来たら、猛烈に振りたくなってしまうわけです。ダウンの途中で、「ここ」というとき、振らずにいられないという症状はありませんか?

その「ここ」というポイントを発見し、自分自身のやっている「余分な動作」であることを発見したら、治すのは簡単ですから、そこが開眼です。

よーく自分自身の動作を自己チェックしてください。これを発見するのはほんとうにむずかしいことですが、発見できたら、ものすごく大きな果実があると思います。

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